ニューヨークに星の数ほどあるコワーキングスペースを直撃取材する本連載!第7回は元ベンチャーキャピタリストのGary Chouが立ち上げた会員制オフィス「Orbital」に行ってきました!

ニューヨークのコワーキングスペース巡りもいよいよ後半戦。ニューヨーク在住の知人におすすめのコワーキングスペースを訊いてみたところ「友人がひとつ運営しているよ」とご紹介いただいたのがこの「Orbital」。

NYのコワーキングスペースを渡り歩いてきた知人が「他のコワーキングスペースとはひと味違う!」と言い切っていたことが印象的。さらに、シンプルでセンスの良いホームページを持ったコワーキングスペースながら、ウェブ上にあまり情報がなく、全く商業的でない雰囲気に惹かれ、残り少ない滞在時間の中で行くことを決めました。

Orbitalは、チャイナタウンやリトルイタリーに程近いところにあり、こちらがビルの入り口です。一階部分が絶賛工事中で上の階に通じる扉も落書きされていました。

8 1
廃墟かと疑うほどのとっつきにくい外観

地図を見直しても住所に間違いはなさそうなので、意を決してインターフォンで「234」を押します。

しかし「234」を押すと出てくるのは、「KICKSTARTER」の文字。訪問時はKickstarterとOrbitalの関連を全く知らなかったので頭の中がハテナになりながらも、呼び出しボタンを押します。

8 2
今となっては表札もなにもないのに「234」と押せたことが不思議。知らないと入れない世界への入り口です

鍵が開く音がして、オフィスのある二階へ。ギシギシと音がする階段を上ります。

さっそく中へ入ってみる

中に入ると特に受付はなく、待合スペースのような広々とした空間が広がっていました。照明は蛍光灯で隅々まで明るくするようなものではなく、間接照明がメインで若干の薄暗さを感じます。

8 3
まるで友達の家に遊びに来たような感覚

少し離れたところには、人が作業しているテーブルも見えます。

8 4

運営代表者のGaryは不在でしたが、たまたまオフィスに遊びに来ていた、Orbital第一号会員のJedが対応してくれることになりました。Jedはニューヨークから引っ越してしまって、もうOrbitalのメンバーではないけども、この空間と人に愛着があってちょくちょく遊びに来ているそう。そんなタイミングに偶然居合わせて、ラッキー!

8 5
約1時間ほど案内に付き合ってくださいました。Jedありがとう!

Jedは流暢な日本語を話します。なんでなんだろう、、と怪訝な表情をしていたら、東京や京都に住んでいたことがあり、日本のコワーキングスペースでは六本木にあるアカデミーヒルズや、Co-labを利用したことがあるとも話してくれました。

壁に貼ってある大量の顔写真は……

オフィスは2〜4階の3フロア構成で、2階のオープンスペースはお客様を招いたり、自分の好きなところで作業したりできる場所です。

8 6

入ってすぐのソファに座ると目に入るのが、大量の顔写真。これらはOrbitalのメンバーの写真で、現役と卒業生とで分かれています。

8 7
左が現役メンバー、右が卒業生

壁には何も書いておらず、何か法則性がありそうな感じでざざっと貼ってありますが、きっちりしすぎない適当な感じが愛情を感じます。

顔写真スペースの横には、文房具などの備品や郵便物、ごみの捨て方などを案内している掲示板があります。

8 8
奥に見えるのは、キッチン

Amazonダッシュボタンを魔改造、Slack連携で交流促進

大人数で使うにも困らなそうな広々としたキッチンは、Orbitalのブログにも登場しています。

スクリーンショット 2017 04 14 15 15 22
Orbitalブログより

皆さんでパーティの準備をする様子や色々な創作料理なども登場して楽しそう。

8 9
料理が捗りそうなキッチン

戸棚にはJedが魔改造を施したAmazonダッシュボタンが……。

8 10
正式名称はAWS IoT ボタン。押した履歴は残らないので押しやすい。

このボタンは、入居者全員が利用しているSlackと連携しており、コーヒーを飲んでいるときは短く1回、ビールなどのお酒を飲んでいるときは短く2回、食事しているときは長めに1回押すと、キッチンでの作業がSlackで通知されます。

キッチンは会話が生まれやすい場所なので、ひとり寂しくなったときに便利。Slackの通知をきっかけに、コーヒーなどを飲みたくなった人がキッチンに来るそうです。

夏は屋外利用OK、清掃はタブレットで依頼、イベント設備もバッチリ

キッチンの横にある、大きい鉄製の扉は外につながっています。

8 11

夏のみの開放ですが、ニューヨークのシェアオフィスで度々目にしてきた流行りの屋上・屋外はこちらでも楽しめます。

8 12
ベンチ、テーブルも完備

お掃除は清掃サービスに頼んでいて、こちらの備え付きのパッドで連絡を取り合っているそう。なんだかスマートですね。

8 13
iPad……!?

フロアの反対側にはプロジェクターや、音響設備などが揃っていました。

8 14
発表会、パーティ、各種イベントも開催できます

会議室で「KICKSTARTER」を発見

2階をひととおり見たあとは、ギシギシと音がする階段を上って3階へ。

8 15

3階は固定席フロアで、大きめのテーブルとオフィスらしい椅子が出現します。

8 16

机を広々と使いながら、皆さん黙々と仕事をしていました。

8 17

誰かの固定席ではなくて、誰でも座って仕事してもよい席には、「OPEN SEATING」の表記があります。

8 18

静かに仕事をするエリアと、わいわい話しながら仕事ができるエリアとで分かれています。

8 19
分かりやすい表記ですね

会議室もいくつかあり、ドアには「KICKSTARTER」のロゴで往年の名残を残しています。

8 20
8 21
おなじみのロゴ

入居者の漫画が読めるコーナーも

4階へ上がるとイベントスペース用のフロアが広がります。

落書きを残したままの剥き出しの壁に、所々にあるデスクや機材が、なんでもありの自由な雰囲気を感じさせます。

8 22

イベントスペースの一角には、漫画アーティストの入居者が持ってきた作品が置いてある、コミックコーナーも。

8 23

OrbitalとKick Starterの関係性

Orbitalは、クラウドファンディングサイトKick starterの元オフィスとして2014年3月に産声を挙げました。

代表のGaryは元VC。Four squareなどへの支援実績があるベンチャーキャピタル「ユニオンスクエアベンチャーズ」に所属しており、商品やサービスのデザインを再考し、Kick Starterに出して商品化などのチャンスを得る手助けをしてきました。

現在は、School of visual artsで講師をするデザイナーだといいます。

8 24

入居者は一人から数人規模の事業、プロジェクトをしている方が多く、道端にある駐車スペースの駐車可能時間のサインをゲリラ的に再構成して表記するプロジェクトTo Park or Not To Parkや、中国のインターネット事情についてマガジンを書くプロジェクトをKick Starterで立ち上げた人などがいます。

今回案内してくれたJedは、ユニクロのモバイルアプリを作りつつ、バーバーショップというアカペラのグループも組んでいて、Kick StarterでCDアルバムを出したそう。なんだか、とてもファンキーでわくわくします。

会員制のOrbitalならではの利点

2016年10月現在、入居者はGaryの関係者40名のみで、それぞれが色んな分野でクリエイティブな活動をしている人ばかりです。

全員がお互いをよく知っているので、入居者たちはとても親密。イベントも共同で企画開催するし、新しくプロジェクト(iPhoneアプリでニューヨークシティの歴史的な情報を表示するプロジェクト等)を立ち上げることもあります。

他のコワーキングスペースと異なる点であり利点でもあるところは、Garyが、デザイン思考やマネジメントについてのプログラムを提供し、入居者らの事業成長を手助けしているところ。

さらには、Gary自ら入居者同士をつないでネットワークを作り、人や事業が成長する環境を作っています。
肩に力が入った堅苦しい感じでなく、無理せずマイペースな空気を醸しているのは、このビルの内装も無理せず、そこにあるビンテージ感を活かしているからでしょうか。

8 25
綺麗すぎず、そこまでお洒落でもなく、知る人ぞ知るプライベート感。

知っている人だけが分かる寛ぎ方で、プロジェクトやアイディアを育む。ばりばり上昇志向で切磋琢磨し合うというよりは、ゆりかごのようで心地の良い空間。家のようなオフィスでした。

Orbital