月249ドルで毎日24時間アトリエ利用可能「Con Artist」は展示もギャラリーもお仕事もつくるNY在住アーティストの一大コミュニティでした——ニューヨークの素敵なコワーキングスペース vol.6

ニューヨークに星の数ほどあるコワーキングスペースを直撃取材する本連載!第6回はアーティストのために作られたシェアギャラリー&アトリエ「Con Artist」に行ってきました!

シリーズ「ニューヨークの素敵なコワーキングスペース」

ニューヨーク、マンハッタンの中でも、チャイナタウンやリトルイタリーに程近い、文化が交じり合うような場所にCon Artistはふっと現れます。

通りに面するショーウィンドウには、そのときの展示のテーマが大きく書いてあるので、パッと見ではここがコワーキングスペースだとは分かりにくいかもしれません。

中に入ると、通りに面したスペースはギャラリーになっています。

一定期間ごとに変わるテーマに基づいて、所属アーティストたちの作品を飾っています。

もちろん、飾ってある作品は購入可能

ギャラリーの後ろにはコワーキングスペース

後ろを振り返った風景がこちら。

壁がむき出しのレンガでかっこいい

この日の夜は、映画ナイトが開催されるとのことで、プロジェクタで使用する布にアイロンをかけたり、ピザの手配をしたりと皆さん大忙し。

上の写真の左部分の赤の建具は、空間を上と下に分けて活用するためのもので、下はスタッフ用の机と椅子になっています。

こもるにはバッチリ

上はフロアを見渡すための展望台。フロアでランウェイなどのショーを開催するときに、観客席として重宝しそう。

こちらは上から見た風景です

同じ場所には、3Dプリンターもあります。価格や大きさにより個人所有が難しい機器が使えるのは、嬉しいものですね。

こちらの製品はビックカメラで約29万円です

アート感満載のミーティングルームとトイレ

下のフロアに降りてさらに奥へ進むと、中にミラーボールがあるコンテナのようなミーティングルームがあります。

だいたい4名くらい入れる大きさ

さすがアーティストの空間だけあり、ミーティングルームもアート感たっぷり。中の落書きもアートの一環のように見えます。

案内してくださったのは、創業時の2009年からスタッフをしているFelaさん

ミーティングルームの横には、ロッカーもあります。

貸出料金は月8ドル〜

おまけでロッカーの奥にあるトイレも見せてくださいました。カラフルでアートの香りがします。

入居者さんが勝手にチラシや絵や落書きをしていくそう

屋内でできない作業ができる裏庭も

奥突き当りのドアを開けると、地下につながる階段が現れます。昔ながらの構造や壁をそのまま残していて、絵になります。

階段の途中にあるドアを開けると裏庭が出現します。裏庭は、主にスプレーがけなどの、屋内ですると部屋を派手に汚したり臭いがこもったりする作業のための場所だそう。

ゴミなのか、アート作品なのかわからないものも転がっていました

工具も素材もなんでも使い放題なアトリエ

さらに下へ降りていくと、アーティストのアトリエに到着。私たちが訪問したときは、3名の方が作業をされていました。

アトリエだけに水回りも完備。

備え付けの工具は全て貸出可能です。

さらにペンキも自由に使える上、作品の材料としてストックしてある雑誌も素材として自由に使えるんだとか。

コンテナにしまってあるのは個人の私物ですが、それ以外はほぼシェアOKで自由に使ってもいい状態です。

マネキンはおそらく私物

無造作にいろんな方々の作品が置いてあり、問答無用にわくわくする空間です。

Con ArtistがNYに生まれた背景

Con Artistは2009年創業のアーティスト用のギャラリー兼コワーキングスペースです。

個人でギャラリーやアトリエを持つには、家賃もハードルも高いのがニューヨークのマンハッタン中心部。であれば、アーティスト複数人で場所をシェアすればいいのではというアイディアから始まったのがCon Artistです。

去る前に自分の作品を写真に撮ってほしいと声をかけてくださったおじさま

通常だと展示料がかかるギャラリーや展示会を、所属アーティスト複数人で企画して、出品できるのも魅力です。会員同士でコラボレーションが生まれ、週に一度は大きいショーを開催しているそう。アーティスト自身がテーマ設定をすることが難しいショーなども、アーティストが自ら企画して実施できます。

リアルな場所以外につながりや情報をシェアするシステムも

Con Artistでおもしろいのは、ギャラリーやアトリエをシェアするだけに留まらず、アーティストのつながりや情報だけが欲しい、という声に応えて、2014年からウェブ上の会員システムを作っていること。

もともとギャラリーやショーの構成を相談できるグーグルグループだったのが、専用システムを立ち上げ、構成の相談だけでなく、キュレーターの好みや過去実績を見せることでやりとりをスムーズにする機能やアーティスト向けの案件紹介の機能を追加したんだとか。

広告代理店による案件紹介もあり、コンペで選ばれたアーティストの作品がアップル社のCMに起用されるなど、アートで食べていけるアーティストの輩出にも力を入れています。

会員システム立ち上げ後に、システムだけを使うアーティストも募ったところ、月5ドルのお手頃な価格設定でみるみるうちに会員が増え、いまや登録者が450名(2016年10月現在)にものぼっています。

月249ドルで毎日24時間、NYのギャラリー付きのアトリエが使える

そのうち30名はアンリミテッド会員で、アトリエに通っています。会員登録に関して選考はなく、どなたでも大歓迎。現時点ではアトリエは大混雑することはなく、皆さんがほどほどに譲り合って気持ちよく利用できている様子です。月249ドルで毎日24時間利用できるアトリエを、ギャラリー付きで都心に持てるのはなんとも魅力的。

Accessible(利用しやすい)、 Affordable(手の届く価格)が重要なのだと、スタッフのFelaさんは繰り返しおっしゃいます。

それだけでなく、きゃりーぱみゅぱみゅの曲がBGMとして流れていたり、気が付くと「Watch your head(頭上に気をつけて)」という注意書きが押しつけがましくなく柱などに書かれていたりなど、空間を構成するアートとスタッフの遊び心が、よりこのコミュニティを魅力的にしているのだと思います。

Con Artist