眠らない街・新宿歌舞伎町で毎月のように1000万円以上の売上をたたき出している超売れっ子ホストのA氏。ホスト歴は約10年近くになる。浮き沈みの激しい水商売のなかで、この数字は並大抵のことでは達成できない。

 一見華やかに見えるが、そこは男と女の世界。あらゆる出来事があったはずだ。

 私は幾度となく取材のオファーを出し続けたが、ホストはイメージが重要。客に夢を見させるのが商売であり、詳しい話は出来ないのだという。そこで今回は、絶対に顔や名前は出さないという条件の下、ようやくインタビューに漕ぎ着けることができた。

 果たして、彼はいかにして成り上がったのか。彼が見てきたホスト業界の現実とは——。

Sakuradori
キャバクラやホストクラブが乱立する歌舞伎町さくら通り

顔面偏差値は中の上、それでもNo.1

——関東某所。私が約束の10分前に到着したにも関わらず、すでにA氏はそこで待っている状態だった。

 実際に会ってみた第一印象としては、失礼ながら「えっ、これでNo.1?」。正直言って、顔面偏差値は中の上程度で、どこにでもいるような普通の男性だ。軽く挨拶を交わした後、まずは取材に応じてくれた事に感謝を述べると、彼はかしこまった表情でこのように返す。

「いえいえ、こちらこそ。何回もお話をいただいたのにも関わらず、すぐに応じられず申し訳ありませんでした」

 そう言って深々と頭を下げる。しかも、よく見てみると灰皿にはタバコの吸い殻が5本。どうやら1時間前には待っていたらしい。

 さらに「タバコは吸われますか? もし苦手でしたら吸うときは別の場所に移動しますので」と気遣いをみせる。会ってから5分、この男性からは好印象しか得られなかった……。

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“どこにでもいそうな普通のホスト”という並のルックスではあるが、彼の気遣いやていねいな態度には感心せざるをえない

歌舞伎町ホストが見てきた業界のリアル

——まずは、ここ歌舞伎町でホストを始めたキッカケはなんでしょう?

高校を卒業してから20歳までは地元(仙台)でホストをやっていました。昔から成り上がってやろうという気持ちはひと一倍強かったように思います。そこである程度仕事を覚え、自信もついたので歌舞伎町で挑戦してみようと上京しました。歌舞伎町はホストにとって憧れの聖地。特に地方でやってる人ほど、その傾向が強いのではないでしょうか。僕も実際そうでしたし。

今でこそ、そこそこの生活はさせていただいてますが、上京当時はヒドい生活でしたよ。寮に入ってたんですが、同い年の新人ホスト3人と6畳の部屋で雑魚寝。収入なんてほぼありませんでした。逆に聞いてもいいですか? ホストにどんなイメージを持たれてますか?

——正直申しますと、一見華やかに見えてバリバリの体育会系。上下関係に厳しく、女は金にしか見えてない……でしょうか?

あはは(笑)。でも当時はそんな感じでしたよ。マネージャーや先輩からの鉄拳制裁なんて当たり前。先輩のヘルプに付いて、そのお客さんに気に入ってもらうまでは良いのですが、次回から指名が先輩ではなく僕になった場合、裏でボコボコにされましたよ。

逆に僕が先輩になって、同じようなケースになったときは、全く同じ事をやってましたけど。いま考えるとただの腹いせですね。自分の客が取られそう、売上が伸びていて自分を越えそう、なんて感じたら、追いつめたりもしてました。

それでも辞めない人間はハートが強いからやっぱり売れてくんですよね。何が何でも売れてやるって。まぁ、こんな考えが出来る人間はどこかおかしいか、本当に歌舞伎町ドリームを見てる人じゃないでしょうか。多分、僕は前者ですね。

客が自殺するまで追い込むのが当然だった

当時はみんなNo.1になるためにあらゆる手を使っていたのは確かです。もちろん僕自身も。売上が全ての世界ですから、手段なんて選んでられません。絞るだけ絞って、先がなければ切り捨てるのが当然です。

なかにはヒドいやり口でお金を引っ張っていたホストもいましたよ。たとえば、お金が払えない客を風俗で働かせるのなんて序の口で、中国人に1週間200万で売り飛ばしていた人も。その後、お店に来る事はなかったですし、噂では自殺したとか……。

こうやって改めて客観視してみるとヒドいですよね。でも、僕らホストもリスクを背負ってるんですよ。売り掛けって知ってますか? 簡単に言うとツケですね。この売り掛けをしたままお客さんに逃げられると、全部ホストが支払わなくてはいけないんです。給料全てなくなる事もありますし、額が額なら支払えないなんてこともあります。そんなとき、逃げてしまうホストも当然います。

業界で言う掛け逃げってやつですね。店側は入店前にそのホストの実家住所までおさえてるので、徹底的に追い込みますよ。店にとってはお金さえ回収すれば問題ないので。

メンヘラで危険な女もいる

昔はお客さんに逆恨みされて、ストーカーされたり、殺されそうになったり……。そんなこともしょっちゅうでした。ホストも文字通り体張ってましたよ。

ホストを長くやってると、危険なお客さんは何となく雰囲気でわかるようになるんです。たとえば、ハイブランドのバッグを持っているのに、足元が汚いサンダルとか。精神が不安定な証拠ですよね。なので、今は事前に回避出来てます。

とはいえ、僕は過去に2回ほど刺されたことがあります。警察沙汰にもなってしまいました。斬りつけてきた包丁を腕で受け止めたんですけど、17針を縫う大怪我。いまでもその傷が残っています。

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腕元を捲し上げると、そこには大きな傷が残っていた。ただし、本人特定を避けるため写真はNG

SNSで自分を売り込むことが今の主流

——数年前と現在のホスト業界って違うものですか?

全く違います。いまはSNSが当たり前にある世界じゃないですか。これだけネットが普及してると悪い噂なんてあっという間に広がるから怖いのも確か。名前を入力するだけで情報を手に入れられますから、昔のようなスタイルで営業してたら完全にアウトです。

客にはもちろん、後輩に対する態度も同様。後輩からネットで叩かれるなんてケースも多々あります。良い噂よりも悪い噂の方が広がり率は圧倒的なので、常に言動には気を使って行動してます。小さなつぶやきだったとしても、意外と厄介なもんですよ。ですから、日々の言動には気を使ってます(これまでの丁寧な対応、気遣いに納得!)。

一方で、SNSは営業ツールでもあります。昔はメールや電話をしてましたけど、SNSがそこまで普及していたわけじゃありません。でも今は、SNSをやらないと生き残れない。レスポンスを早くするのは当たり前ですし、ネットを使っていかに自分を知ってもらうかが重要なんです。

お店が自分を売り込んでくれるなんて思ってたら、あっという間に差をつけられちゃいますよ。売れたいのなら自分自身を商品と考えて営業マンになるしかないんです。裏を返せば、これだけ自分を露出できる環境があるわけですから、宣伝し放題ですよね。ネットを使った宣伝活動がいまの主流という事は間違いないですね。

囲っている女を増やすことが重要

——では、最後になりますがNo.1を維持するために必要な事とは?

SNSの有効活用はあくまでセールスです。やはりNo.1になるためには囲っている女性の数を増やすことではないでしょうか。先ほども申しましたが、この世界は売上が全てです。いくらカッコ良くて、人当たりが良くても売上が上がらなければ何の説得力もありません。それにはやはりお金を落としてくれる女性をいかに自分の傍に置いておくか。そして切るタイミングを見定められる目を持つことでしょうね。

時代を経ても根本部分は変わらない

 ホストにとって「客からお金をいかに引き出すか?」という根本的な考えは今も昔も変わりはない。しかしながら、今回のインタビューでは、私が今までホストに対して持っていたチャラいだけのイメージを完全に覆すことになった。時代のニーズに合わせ、彼らは試行錯誤しながら自分という商品を必死に売り出している。

 取材の礼を告げて席を立つ。すると、私が外に出るまでの間、A氏は出会ったときと同様に深々と頭を下げ続けていたのだった。
 

(取材・文/NON)
Shinjyuku

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