世界有数のリゾート地・バリ島。インドネシアの伝統文化が色濃く残るウブド、サーフィンのメッカとも呼ばれる美しいビーチが広がるクタレギャン。サーファーだけではなく、近年ではハネムーン海外ウェディングの地としてカップルからも人気を集めている。

 2015年6月、私がバリ島に足を運んだことも同様の理由(もちろん、私が結婚するのではない)。インドネシア好きの旧友からヴィラを貸し切って挙式をおこなうとの連絡が入り、それならばと駆けつけることにしたのだ。いつものようなアングラスポットの潜入調査をする予定もなく普通の観光を楽しむつもり。そのはずが……。

 ──デンパサール空港(ングラ・ライ国際空港)に降り立ったのが深夜1時過ぎ。その2時間後、私は寺院の木陰で女性のスカートをのぞきこみ、性なる観音様を拝んでいたのだった。

 今回はそんなバリ島旅行、クタエリアでの裏エピソード・風俗情報を紹介する。

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いきなり空港のタクシーで騙される

 乗り継ぎの韓国・仁川空港で飛行機が2時間も遅延してしまい、バリ島・デンパサール空港に到着した頃には日付も変わっていた。タクシーカウンターで割高の料金(約1,500円)を前払いし、運転手にチケットを手渡す。現地でロスメンと呼ばれる安宿やバンガローが密集するクタエリアのポピーズレーンを目指していた。しかしながら、さっそく痛い目にあってしまった。

「ここがポピーズレーンだ」

 乗車してわずか10分弱。タクシーから降ろされたものの、安宿らしきものは見当たらない。あるのはビーチ沿いにそびえ立つ高級ホテルばかりだ。自分自身そこそこ旅慣れているつもりだったし、まして一般的なリゾート地でいきなり騙されるとも思っていなかった。完全に油断した。初めて海外旅行をする人のようなミス。やはりここはアジアなんだと実感したのだった。ようやくスマホから地図を確認してみたが、目的地よりずいぶんと手前だ。運転手が横着したらしい。とはいえ再びタクシーを拾う気にもなれず、自力で安宿のあるポピーズレーンを探すしかなかった。

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2人乗りのバイクが出てきた小さな通りが安宿(ロスメン)の多いポピーズレーン

ヒンドゥー寺院とディスコが共存

 慣れない土地を右往左往しながら、1時間ほど歩いてようやくラブホみたいな安宿を確保。ポピーズレーンの周辺は繁華街でもあり、外国人向けのディスコやBARも乱立する。その一方で、100メートル先には小さなヒンドゥー教の寺院が立ち並び、街灯さえ心もとない。日本であれば地域住民から不謹慎だとクレームが入ってもおかしくない距離感だが、そんなチグハグで異様な雰囲気に興味をそそられた。そこで、さっそくメシのついでに少しばかり探索してみることにした。

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私が泊まったラブホのような雰囲気のロスメン。バスタブ付き
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街中のいたるところには小さなヒンドゥー寺院が点在している

クタのあやしい夜の街を歩く

 深夜にも関わらず、大通りには多くの人で溢れかえっている。クルマやバイクも頻繁に行き交い、まともに道も歩けないほど。欧米人パーティーピーポーと現地チンピラの間で、時折こぜりあいまで起きている。私は屋台のケバブを食べながら、しばらくその様子を眺めていた。

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大音量のクラブミュージックを垂れ流しにしたディスコやBARが立ち並ぶ

ディスコ横に怪しいお姉さんが待機

 爆音のヒップホップが流れるディスコ。その横にはセクシーな衣装を身にまとった浅黒い肌の現地女性。彼女たちは、付近にいるものの一向に入店する気配はない。音楽にカラダを揺らせるわけでもなく、通りを行き交う男性に目配せをしている。プロの売春婦に間違いない。試しに近づいてみると案の定、小声で「SEXしない?」とお誘いが……。

 試しに「いくら?」と聞いてみると、それまではやる気なさそうに突っ立っていた彼女たちが、(客になりそうな日本人の登場に)色めきたってしまったようだ。私が歩くたびに、次から次へと声をかけてくる。だが私はバリ島に到着してから2時間も経っておらず、物価の感覚もよくわからない。ひとまず中心部から離れたエリアで落ち着こうと考えた。

太ったオバちゃんが違法薬物の売人

 アジアの路上には物売りがたくさんいる。野菜などを風呂敷いっぱいに持ち運び、道行く人たちに押し売りしようとする姿は珍しくない光景だ。

 繁華街を抜け、薄暗い通りに出たときだった。風呂敷をかついだ太ったオバちゃんが、顔をしわくちゃにさせながら満面の笑みで近寄ってきた。物売りなのだろうか。現在は深夜。なぜこんな時間に。オバちゃんが風呂敷を広げつつ得意げにこう言う。

「ハッパ、マッシュルーム」

 風呂敷の中をのぞくと、野菜ではない。幻覚物質を含むマリファナマジックマッシュルームだ。たんまりと詰め込まれた危険な野菜の量に思わず目を丸くする。だが私は翌日に友人の結婚式を控えている。残念ながらノーセンキューだ。

「ニホンジン、ミンナカウヨー!」

 しつこく食い下がるオバちゃんを小走りで振り切ろうとすると、さすがに太りすぎてついてこれないらしい。それでも去り際に大声でひと言。

「オンナ(とSEXしたいか)!」

 最後まで恐るべし、オバちゃん(笑)。

売春婦がバイクで徘徊

 薬物の移動販売をする悪いオバちゃんを振り切り、さらに薄暗い道に出た。人通りもまばらで、たまにバイクが通りがかる程度。私は、さすがに韓国から長時間のフライトだったこともあり、徐々に眠くなってきた。トボトボ歩いていると、なにやら後ろからあやしい気配。ブルル、ブルルル……という今にも壊れそうな安っぽいエンジン音。

「ハーイ、ハワユー」

 振り返ると、ボロいバイクにまたがったミニスカワンピースのセクシーな女のコ。20代前半ぐらいだろうか。こちらに手を振りながら真横までくると、路肩にバイクを停めた。まさか逆ナンパ?と思いきや、どうやらホンダガール(編注※バイクを流しながら客を探す売春婦の総称。その所以はホンダ製に乗っていることが多いため)のようだ。

 彼女はうっすらと笑みを浮かべながら、私の目の前に立ちはだかるとフェ●チオの下品なジェスチャー。

 お相手の女のコはなかなかの美人だ。ぶっちゃけ、こちらとしてはラブホみたいな宿まで確保してある。準備は万端だ。とはいえ、いまの自分には見知らぬ人間をお持ち帰りするほど体力と精神面で余裕がない。じつは美人局ではないか、物を盗まれないか、などを気にし続けなければならないからだ。

「朝までOK」 

 彼女がカラダを密着させながら迫ってきた。さらにこちらの股間を豪快に握ってくる。だが、前述の懸念に加え──朝までSEXしたら起きられるのか(挙式は11時から)、寝坊して間に合わなかったら最悪だ──などと迷っていると、「ノープロブレム」と言いながら、私をどこかへ連れていこうとする。彼女が手を引く先は街灯もなく真っ暗闇。もしもチンピラたちが待機していて、そのまま身ぐるみを剥がされてしまったらどうしよう……。

 正直なところ不安のほうが大きい。一方で、これからなにが起こるのかワクワクしている自分もいる。やはり潜入ライターの血を抑えることはできないのか。覚悟を決め、なすがまま着いていくことにした。

深夜の寺院でご開帳

 徒歩3分。人やバイクがギリギリ通れるぐらいの小さな路地裏。なんと、ここはヒンドゥー寺院の真横だ。大丈夫なのか。罰当たりにもほどがある(汗)。彼女はそんなことも気に留めず、寺院の壁を背に堂々と仁王立ち。そして力強く言う。

「見なさい、私のオ●ンコ!」

 彼女が自らスカートをまくしあげると、なんとノーパン。せっかくなので中をのぞきこむ(笑)。キレイに短く整えられたアンダーヘア……はさておき、異臭がすごい。なんかすごい。もしや性病なのではないか。しばらく観察していると彼女が自らご開帳。先ほどよりもさらに語気を強めてこう続ける。

「カモン、ハリーアップ(早く挿れて!)」

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厳かな観音様を拝む私。とてもではないがニョイ棒は使えそうにない

 恐らく彼女はこうして道ばたでヤリまくっているのだろう。そのたびに洗っているわけがないので臭いうえにビョーキのリスクも高い。

「ノープロブレム!」

 彼女はそう繰り返すが、ゴムすら持っていないのだ。プロブレムだらけの状況では、さすがに私のニョイ棒(チンチン)も無反応。せっかく観音様まで拝ませてもらっておきながら、申し訳なく思った。そこで私は、手と手を合わせて「南無〜」と合掌した後、5万ルピア(約400円)のお賽銭(チップ)を渡してからその場を去ったのだった。

昼間のクタエリアもハプニング満載!

 ──数日後。無事に友人の結婚式を終えた私は、ジンバランに住む日本人Mさんと知り合い、彼の家に転がりこんでいた。Mさんは幼い頃から父親の仕事の都合で現地を行き来しており、インドネシア語がペラペラ。さらに中学2年生の頃から風俗に足を運んでいたという強者。そんな現地在住ならではの生きた情報を授かり、バリ島の風俗地帯サヌールの調査も果たした(結局いつも通りのアングラ旅行になっている)。この辺りの顛末はいずれ本にするか、ニホンジンドットコムで書こうと思っている。

 さておき、クタエリアでハプニングが巻き起こるのは夜の時間帯だけではない。最後にもうひとネタ記しておこう。

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クタエリアのトラディショナルなマッサージ屋。ムフフな行為はナシ

普通の土産物屋がマッサージ風俗に

 Mさんは昼間、仕事に出かけている。そのため、私は時間を持て余すようになっていた。バリ滞在期間も残り少なくなってきたところでお土産を買うため再びクタを訪れた。

 クタエリアには観光客向けの土産物屋がひしめきあう。金額交渉を楽しみながらブラブラ歩いていると、やたらとチンチン型のグッズが売られている。聞くと、現地では聖なる意味をもつモチーフなんだとか。

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インドネシアではチンチンは神聖なもの。土産物屋では、栓抜きやオブジェなど様々なグッズとして売られている。店主のオッサン「オレのビッグマグナムはこんなもんじゃないぜ〜?」

 ともあれ、どうせ土産物を買うなら店員のお姉さんが可愛い店を選びたい(笑)。冷やかしも含め、一軒の土産物屋をのぞいていたときだった。

「買い物も疲れたでしょう。足裏マッサージしていかない?」

 土産物屋にも関わらず、マッサージとはどういうことなのか。店員の娘は10代後半と思われる少女。店内には施術用のベッドすらない。だが歩き疲れていたことは事実だ。金額を聞くと1時間で6万5,000ルピア(約500円)と激安。そこでお願いしてみることにした。

 彼女に連れられて店の奥に入ると、3畳ほどのスペースにベッドが置かれていた。灯りは裸電球ひとつしかなく、昼間だというのに薄暗い。さらにベッドは1度も洗っていないのではないかと疑ってしまうほどホコリっぽくナゾのシミだらけ──。

「パンツ1丁でうつ伏せになって待っててね」

 娘はそう言い残し、どこかへ消えていった。こんな場所に裸で寝転がっては、ダニや虫に刺されてしまうのではないか……。猛烈な不安に襲われる。とはいえ、彼女は素晴らしい指圧テクを持っているかもしれないのだ。ベッドが汚いぐらいで怖じ気づいてはならない。

4人の女性が両手両足をロック

 うつ伏せになりながら待つこと5分。いきなり両足を強く握られたので何事かと思いきや、そこにはドラム缶のような体型のオバちゃん2人組が!

 先ほどの若い娘はどこにいったのだろう。ワケもわからぬまま足裏マッサージがスタート。確かに気持ちいい。30分ほどすると次第にウトウトし始めた。
 ふと気付くと、両腕もロックされていた。今度は若い娘の2人組だ。いつのまにやらペディキュア(爪の手入れ)まで勝手に施されている。

「これ(爪のペディキュア)私がやったの。チップ忘れないでね」

 私は両手両足をマッサージされているため、まったく身動きがとれない。ベッドが小汚いことを抜きにすれば、プチ王様状態でもある。続けて、右手担当の娘がこう聞いてくる。

「マッサージの後はどうしたい?」

チンチンマンマンヤルヤルの大合唱

 どうしたいと問われても。当初の足裏マッサージとはあまりに異なる状況。一体どういった料金を請求されるのだろうか。恐る恐る聞いてみる。だが、右手担当の娘は返事をせずに、なにやら現地語で他3人と相談中。その後、誰が教えたのか日本語で大合唱が始まった。

「チンチン!」(右手の娘)
「マンマン!」(左手の娘)
「ヤルヤル!」(右足のオバちゃん)
「ヤルヤル!」(左足のオバちゃん)

 普通の土産物屋かと思いきや、なんとマッサージがあるうえに本番まで可能というのだ。これまでアジアの様々な国を歩いてきたが、こんな意味不明な体験は初めて。念のため本番価格を問う(笑)。

  • 10代後半の右手娘:9,000円
  • 20代前半の左手娘:7,000円
  • 40代の右足オバちゃん:5,000円
  • 50代の左足オバちゃん:3,000円

という結果。どうやら年齢が高くなるにつれて安くなるようだ。

果たして総額は……

 それはさておき、こんな店に長居していてはタケノコ剥ぎのようにお金をむしり取られてしまうだろう。私は「チンチンマンマンヤルヤル」の大合唱を制し、改めてマッサージ代のみを支払う旨を告げる。するとどうだろう。総額8,000円とのたまう。正直そこまでの大金は持ち合わせていない。

 洋服を着ながら交渉を続ける。当初の約束では500円だったはずだ。そもそもペディキュアや4人体制のマッサージは頼んでもいない。そこで500円×4人=2,000円チップとして500円を加え(合計2,500円)、有無を言わさず部屋を出た。特に追ってくることもなかったので彼女たちも妥協(?)したのだろう。 

観光地とはいえ注意が必要

 さて、今回はバリ島・クタの裏事情を記した。本記事だけ読むと危ないエリアと勘違いしてしまうかもしれないが、決してそんなことはない。他のアジア諸国を旅する場合と同様、深夜は出歩かない、あやしい人に声を掛けられても無視する、なるべく集団行動を心がけるなど、基本的な注意を払っていれば未然に防げることばかり

 そして、ほんの少しのトラブルはさておき、私自身それ以上に魅力あふれる国だと感じた。これまで海外を20ヶ国以上旅してきたなかで、実際インドネシアのバリ島が1番気に入った。現地人の性格、物価、食事、将来性。いつか小さな島でも買って、余生をのんびり過ごすのも悪くないなと思う。

 そんなワケでくれぐれも注意を忘れずにクタエリアをはじめ、皆様にもバリ島の旅行を楽しんでほしい。

(文・藤山六輝)
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