私とバーミヤンの出合いは十数年前にさかのぼる。
それは決まって休日のお昼どき。「ゆいちゃんもバーミヤン来る?」まだ中学生だった私を、母はよく近所のバーミヤンに連れ出した。
別に母はバーミヤンが好きだったわけではない。友人と会うのにそのバーミヤンを使っていただけだ。都合が良かっただけ。西日暮里のバーミヤン。
友人はいつも同じ女性だった。専業主婦で片手で数え切れるほどしか友人のいない母にとって、気軽に会ったり連絡が取れる、唯一の友人。
その人に会うとき、なぜか私も一緒だった。今考えると、私の分だけ昼ごはんを作るのが面倒だったんだろう。今になると分かる。
ただ当時から不思議だった。母には徒歩圏内のそのバーミヤンに、友人は地下鉄で来ていることを。帰り道に聞いた。「いつも来てもらってるけどいいの?」「いいのいいの」そう雑に答える母を見て、優しい友人を持ったものだなあと思っていた。
ちなみにそれは私が結婚をして実家を出るまで続いた。流石に頻度は減ったけど。ちなみにどこかのタイミングで西日暮里のバーミヤンはガストに変わった。だから最後の方は「ゆいちゃんもガスト来る?」に誘い文句も変わった。
結局、母にとってはバーミヤンでもガストでもどっちでもよかったんだなあ。
そんなこんなでバーミヤン育ちな私だけど、よく考えると母の会合以外でバーミヤンに行ったことはほぼなかった。
高校生の頃は南池袋のサイゼリヤでミラノ風ドリアを頼みたがったし、大学生の頃は龍ヶ崎の中心にあるガストでよく山盛りポテトフライを食べていた(クーポンで)。
そもそも私の近くにバーミヤンがいなかった。
数年に1回くらい行くお台場で、あっ、こんなところにバーミヤン…といった形でお目に掛かるくらいだ。
私とバーミヤンが再会したのはいつだろうか。
LINEで「バーミヤン」と検索してみる。今年の1月に前職が一緒の飲み友達らに「なんでも良ければバーミヤンいきたいです」と投稿していた。
なんでも良ければバーミヤンという言葉に、私の自信のなさが見える。そのメンバーでバーミヤンに行くのははじめてだし、自分にとっても久々のバーミヤンだったんだろう。フィジビリしたい感。
そして翌日
どうやら黒霧島をボトルで開けていたらしい。
そう。
バーミヤンの魅力は黒霧島のボトルだ。
900ml/1299円。飲むものは何でもいい、別にビールとかハイボールじゃなくてもいい、ただ酔いたい。でも全く同じ味は飲み続けられない。とりあえず話したい楽しみたい。でもできるだけ安く…
そんな人間が3人集まったらバーミヤンしかない。ボトルを頼んで、焼酎ドリンクバーをたのめば1人2000円そこらで閉店まで飲める。飲み終わらなかったらボトルキープをすればいい。
ボトルキープは2ヶ月。そうなれば、また2ヶ月以内に来ようねという話になる。都合の良さしかない。
そうやってボトルキープをしては、再会して飲み始めるとすぐになくなる黒霧島を、来る度に継ぎ足して注文する。といっても1回で1本しか頼まないけど。でもある日、周期的にちょうど黒霧島を飲み切ったので、そのメンツではバーミヤンに行ってない。
ボトルキープの切れ目が飲みの切れ目になってしまったのだから、バーミヤン新宿西口大ガード店は罪な店だ。
フィジビリで味をしめた私は、社内でもことごとくバーミヤンを推奨するようになった。
渋谷で朝まで飲みたいとなったらバーミヤン明治神宮前店、全社の集まりが終わって平日のちょっと早い時間から飲めそうとわかったらバーミヤン品川コモンズ店。
平日の早い時間にいくバーミヤンは最高だ。ビールもハイボールもレモンサワーも18時までなら200円。何杯飲んでも200円。5杯飲んでも1000円だ。
ついこの間は18時ジャストに駆け込んでビールとレモンサワーを頼む荒業にでた。台風の日も早く帰れたのをいいことに帰宅後すぐに近所のバーミヤンに駆け込んでレモンサワーを2杯飲んだ。
レモンサワーが飲みたきゃストロングゼロでいいじゃん派の私ではあるが、バーミヤンのレモンサワーはいい(ただし平日ハッピーアワーに限る)。なんといっても自分で絞るタイプの生搾りレモンサワーだからだ。
ストロングゼロに飲み疲れた人間にはバーミヤンの生レモンが染み渡る。難しく考え出して結局全てが嫌になったらいつかフレックス退勤をキメてバーミヤンで死ぬほど生搾りレモンサワーを飲むんだ。酔い潰れた原因がストロングゼロダブルレモンじゃなくてバーミヤンの生搾りレモンサワーであって欲しいと思うくらいには、バーミヤンが好きだ。
好きだと言ってしまった。結構好きだ。好きなんだと思う。でもこんなのじゃ足りないくらい好きだ。今まで行ったことのあるバーミヤンは思い出と愛着があって好きだ、でもまだ行ったことのないバーミヤンも好きだ。だから行ってみたい。特に浅草かっぱ橋店。台東区生涯学習センター2Fってなに?パーティールーム完備とは?パーティーしたいぞ!こら!!
って雑に盛り上がってみたけど、私の中でバーミヤンはアガるというよりはチルみある場所。サイゼやガスト的なワイワイ!ウェイウェイ!よりも、気心の知れた仲間とまったり、終電逃して深夜にしっぽり。的な。
黒霧島だけ頼んで、割り物はドリンクバーで各自ご自由に。あとは餃子とかおつまみ2皿500円のとか適当に頼んでよ。どうせ2500円もいかないから。その仕切りの不要さ、手綱を放せる感が最高にいい。
いま考えると、母にとって友人と会うための都合の良い店でしかなかったバーミヤンは、私にとってもまた同じなのかもしれない。まあ私は母親と違って、バーミヤンじゃなきゃイヤですが…。
※この文章は、バーミヤン明治神宮前店で書きました。