the_archive_title('

', '

'); the_archive_description('

', '

');

タイ山奥の秘境メーホンソン。首長族は押し寄せる観光地化の波にあらがえるか

 タイ・ミャンマーの山岳地帯に住む首長族

 伝統的な衣装を身にまとい、通常の2倍以上はあろうかという異様な首の長さが特徴。たびたび日本のメディアでも紹介されているのでご存知の方もいると思う。

 ドキュメンタリー番組では、経済発展が急速に進むタイにおいて昔ながらの生活様式を保っている……などとノスタルジックな描写で映し出されることが多い。

 普段はちょっと卑猥な記事ばかり書いている私だが、それだけのために海外を旅しているわけではない。むしろ日本に住んでいると中々お目に掛かれないような伝統的な暮らしを肌で感じたいと考えている。

 私はテレビで首長族の容姿にド肝を抜かれて以来、いつか会ってみたいと夢見ていた。そこで、その暮らしぶりをタイの北部まで見に行ってみることにした。

首長族が住むタイの山岳地帯メーホンソン

 タイ北部の中心地チェンマイでの夜遊びに後ろ髪を豪快に引かれつつも、眠たい目をこすって早朝のバスに乗り込んだ。パイという村を経由して、ミャンマーとの国境近く、山岳地帯にあるメーホンソンという街を訪れた。

Sleep man
昼寝中のトゥクトゥク運転手。アジアの田舎らしくのんびりした雰囲気だ

思った以上に気温が冷たく、熱帯地域とは思えないぐらい寒い

Bazaar
バナナやスイカなどの果物が並ぶ市場。テレビを見ながらヒマ潰しをしている様子

 私はまず適当なゲストハウスを見つけた後、首長族の村に行く方法を探った。いつものごとく下調べはまったくしていない。どうやら車をチャーターしないとならないようで、1人で行くにはコストが掛かり過ぎることが判明した……。

Guesthouse
メーホンソンの安宿。夜はタイと思えないほど冷え込む

旅行会社の見学ツアーに参加

 迷った挙げ句、現地旅行会社で催行されているロングネック・カレンツアーに参加することにした。「バックパッカーならツアーなんかに参加するな!」と一部の読者には怒られてしまいそうだが、お金のほうが大事だったのでご容赦いただきたい。

 さて、ツアーの参加者は5人。ベルギー人のカップルに、タイ人のハゲオッサン、それからいかにも金持ちそうなドイツ人のジイさんである。大型の乗り合いタクシー、ソンテウに乗り込むと、ツアーの担当者が首長族について次のように説明してくれた。

首長族とは

ミャンマーからタイ辺りにかけて暮らしているカレン族のこと。山岳地帯には野生のトラが数多く生息しており、襲われて命を落とす人が絶えなかった。そこでカレン族は種族を守っていくため、女性の首に真鍮製コイルを巻いて防備。人間の急所である首をトラに噛み切られないための工夫であった。また実際には首が長くなったのではなく、コイルの重量で肩の骨が下がった状態

 私たちが乗ったソンテウは、ぐんぐん山奥へと入っていく。ビルなどの人工物が何もない原風景に、旅気分も高まってくる。だが、そんな気持ちを萎えさせるベルギー人カップルのイチャイチャぶり。また、それをいやらしい目で見るタイ人のハゲオッサン。ドイツ人の金持ちジイさんは、山奥に来てまでひたすら携帯電話をいじっていた。

 せっかくの旅気分が台無しだが、ツアーなので文句はいえない。やっぱり今後はツアーなんかヤメておこう……。

ツアー代金とは別に入村料が必要

 少数民族のモン族の村に少し寄った後、首長族ことカレン族の村に到着。まさに山奥にある集落といった印象。心がワクワクする。

Long neck01
首長族の住む村の入り口。のどかな雰囲気だ

 村の中に入ろうとすると、ツアー代金とは別に※250バーツ(取材当時のレートで約670円)の入村料が必要だという。屋台での食事が50バーツ程度ということを考えると、かなり高い値段設定に思えた。だがここまで来ておいて入らないわけにはいかない。しぶしぶと支払った。

タレコミ情報

※2016年現在、入村料は500バーツまで値上がりしている(ニホンジンドットコム特派員・krayg_monkey)

Man woman
村のなかにいたオジさんだかオバさんだかわからない人

しばらく散策してみると、首長族らしき女性を発見。好奇心に胸をおどらせながら近づいてみる。

Long neck02
首に巻かれた長いコイルが抜群のインパクト!

 ついに憧れの首長族と対面。思い描いていたとおりのとんでもない首の長さ(30センチ近くあるかも?)。そして、気になる第一声……。

「サンビャクエン!」

 彼女の言葉に唖然とした。なんと日本語を喋っている! 手作りの人形などを売りつけようとしてくる。村中には土産物屋がズラリと並ぶ。しかも、なんだかみんな観光客慣れ(※)している。

「ヤスイー、ミルダケミルダケ!」

 歩くたびに首長族の女性から声を掛けられ、次々と土産物を買わされそうになる。なんだこれ……。想像していたのとなんだか違う。テレビで見たとおりの伝統的な衣装の人もいれば、普通に現代的なジャージを着ている首長族もいる。

タレコミ情報

※まだメーホンソンはマシなほう。チェンマイ周辺の首長族はさらにがめつく、まるでパッポンの客引きレベル。若い世代にいたっては、音楽は最新のEDMを聴きヘイヘイ歌い踊る、まさにファッション感覚のロングネッカー!(ニホンジンドットコム特派員・krayg_monkey)

観光地と化した首長族の村

 せっかく首長族の村まで来たので記念撮影をするが、そのたびにチップを要求される。これでは完全に観光地ではないか。ツアーに参加したベルギー人のカップルやドイツ人のジイさんなど、他のみんなは楽しんでいる様子。商魂溢れる首長族に驚いている私を見て、隣にいたタイ人のハゲオッサンがこっそり教えてくれた。

「首長族は、本当はミャンマーにしか住んでいなかったんだ。でも、バンコクのように観光収入を得られないタイ北部のマフィアが首長族の容姿に目をつけ、客寄せとして連れてきたんだ。この村も管理されているのだろう。村の中には英語と日本語の学校もある。だから、みんな言葉を話せるのさ。彼女たちは多額のみかじめ料をマフィアに払うため、あそこまで必死になって頑張っているんだ。まぁ、しょうがないよ……」

Tanaka
彼女が顔に塗っているのはタナカと呼ばれるもの。樹皮をすりおろした天然の化粧品で、日焼け止めの効果もある。ミャンマーではほとんどの女性が使っている

少数民族を取り巻く複雑な事情

 首長族も現金収入を多く稼がなければならない事情を抱えているのだ。私はいっそう複雑な気持ちになった。かつてドキュメンタリー番組でみた姿には、テレビらしい演出が加えられたものだったのだろう。そもそもよく考えれば、旅行会社でツアーが行われている時点で気付くべきだったのかも知れない(苦笑)。

 首長族をはじめ、独自の文化をもつ少数民族の多くが、経済社会の歯車のひとつとして組み込まれつつあることは事実。ツアーに参加した私が言うのも矛盾しているかもしれないが、彼らの文化や風習が、観光客に向けた単なるパフォーマンスへと風化してしまわないことを切に願っている。 

 だが、もはや時代の波にはあらがえないところまできているのかもしれない。 

(取材・文/藤山六輝、撮影/krayg_monkey
S 27451397

 

立ちんぼ・ドラッグ・土産物屋のマッサージ風俗etc. リゾート地バリ島クタのあやしい裏事情を調査

 世界有数のリゾート地・バリ島。インドネシアの伝統文化が色濃く残るウブド、サーフィンのメッカとも呼ばれる美しいビーチが広がるクタレギャン。サーファーだけではなく、近年ではハネムーン海外ウェディングの地としてカップルからも人気を集めている。

 2015年6月、私がバリ島に足を運んだことも同様の理由(もちろん、私が結婚するのではない)。インドネシア好きの旧友からヴィラを貸し切って挙式をおこなうとの連絡が入り、それならばと駆けつけることにしたのだ。いつものようなアングラスポットの潜入調査をする予定もなく普通の観光を楽しむつもり。そのはずが……。

 ──デンパサール空港(ングラ・ライ国際空港)に降り立ったのが深夜1時過ぎ。その2時間後、私は寺院の木陰で女性のスカートをのぞきこみ、性なる観音様を拝んでいたのだった。

 今回はそんなバリ島旅行、クタエリアでの裏エピソード・風俗情報を紹介する。

bali

いきなり空港のタクシーで騙される

 乗り継ぎの韓国・仁川空港で飛行機が2時間も遅延してしまい、バリ島・デンパサール空港に到着した頃には日付も変わっていた。タクシーカウンターで割高の料金(約1,500円)を前払いし、運転手にチケットを手渡す。現地でロスメンと呼ばれる安宿やバンガローが密集するクタエリアのポピーズレーンを目指していた。しかしながら、さっそく痛い目にあってしまった。

「ここがポピーズレーンだ」

 乗車してわずか10分弱。タクシーから降ろされたものの、安宿らしきものは見当たらない。あるのはビーチ沿いにそびえ立つ高級ホテルばかりだ。自分自身そこそこ旅慣れているつもりだったし、まして一般的なリゾート地でいきなり騙されるとも思っていなかった。完全に油断した。初めて海外旅行をする人のようなミス。やはりここはアジアなんだと実感したのだった。ようやくスマホから地図を確認してみたが、目的地よりずいぶんと手前だ。運転手が横着したらしい。とはいえ再びタクシーを拾う気にもなれず、自力で安宿のあるポピーズレーンを探すしかなかった。

bali02
2人乗りのバイクが出てきた小さな通りが安宿(ロスメン)の多いポピーズレーン

ヒンドゥー寺院とディスコが共存

 慣れない土地を右往左往しながら、1時間ほど歩いてようやくラブホみたいな安宿を確保。ポピーズレーンの周辺は繁華街でもあり、外国人向けのディスコやBARも乱立する。その一方で、100メートル先には小さなヒンドゥー教の寺院が立ち並び、街灯さえ心もとない。日本であれば地域住民から不謹慎だとクレームが入ってもおかしくない距離感だが、そんなチグハグで異様な雰囲気に興味をそそられた。そこで、さっそくメシのついでに少しばかり探索してみることにした。

guesthouse
私が泊まったラブホのような雰囲気のロスメン。バスタブ付き
temple
街中のいたるところには小さなヒンドゥー寺院が点在している

クタのあやしい夜の街を歩く

 深夜にも関わらず、大通りには多くの人で溢れかえっている。クルマやバイクも頻繁に行き交い、まともに道も歩けないほど。欧米人パーティーピーポーと現地チンピラの間で、時折こぜりあいまで起きている。私は屋台のケバブを食べながら、しばらくその様子を眺めていた。

night
大音量のクラブミュージックを垂れ流しにしたディスコやBARが立ち並ぶ

ディスコ横に怪しいお姉さんが待機

 爆音のヒップホップが流れるディスコ。その横にはセクシーな衣装を身にまとった浅黒い肌の現地女性。彼女たちは、付近にいるものの一向に入店する気配はない。音楽にカラダを揺らせるわけでもなく、通りを行き交う男性に目配せをしている。プロの売春婦に間違いない。試しに近づいてみると案の定、小声で「SEXしない?」とお誘いが……。

 試しに「いくら?」と聞いてみると、それまではやる気なさそうに突っ立っていた彼女たちが、(客になりそうな日本人の登場に)色めきたってしまったようだ。私が歩くたびに、次から次へと声をかけてくる。だが私はバリ島に到着してから2時間も経っておらず、物価の感覚もよくわからない。ひとまず中心部から離れたエリアで落ち着こうと考えた。

太ったオバちゃんが違法薬物の売人

 アジアの路上には物売りがたくさんいる。野菜などを風呂敷いっぱいに持ち運び、道行く人たちに押し売りしようとする姿は珍しくない光景だ。

 繁華街を抜け、薄暗い通りに出たときだった。風呂敷をかついだ太ったオバちゃんが、顔をしわくちゃにさせながら満面の笑みで近寄ってきた。物売りなのだろうか。現在は深夜。なぜこんな時間に。オバちゃんが風呂敷を広げつつ得意げにこう言う。

「ハッパ、マッシュルーム」

 風呂敷の中をのぞくと、野菜ではない。幻覚物質を含むマリファナマジックマッシュルームだ。たんまりと詰め込まれた危険な野菜の量に思わず目を丸くする。だが私は翌日に友人の結婚式を控えている。残念ながらノーセンキューだ。

「ニホンジン、ミンナカウヨー!」

 しつこく食い下がるオバちゃんを小走りで振り切ろうとすると、さすがに太りすぎてついてこれないらしい。それでも去り際に大声でひと言。

「オンナ(とSEXしたいか)!」

 最後まで恐るべし、オバちゃん(笑)。

売春婦がバイクで徘徊

 薬物の移動販売をする悪いオバちゃんを振り切り、さらに薄暗い道に出た。人通りもまばらで、たまにバイクが通りがかる程度。私は、さすがに韓国から長時間のフライトだったこともあり、徐々に眠くなってきた。トボトボ歩いていると、なにやら後ろからあやしい気配。ブルル、ブルルル……という今にも壊れそうな安っぽいエンジン音。

「ハーイ、ハワユー」

 振り返ると、ボロいバイクにまたがったミニスカワンピースのセクシーな女のコ。20代前半ぐらいだろうか。こちらに手を振りながら真横までくると、路肩にバイクを停めた。まさか逆ナンパ?と思いきや、どうやらホンダガール(編注※バイクを流しながら客を探す売春婦の総称。その所以はホンダ製に乗っていることが多いため)のようだ。

 彼女はうっすらと笑みを浮かべながら、私の目の前に立ちはだかるとフェ●チオの下品なジェスチャー。

 お相手の女のコはなかなかの美人だ。ぶっちゃけ、こちらとしてはラブホみたいな宿まで確保してある。準備は万端だ。とはいえ、いまの自分には見知らぬ人間をお持ち帰りするほど体力と精神面で余裕がない。じつは美人局ではないか、物を盗まれないか、などを気にし続けなければならないからだ。

「朝までOK」 

 彼女がカラダを密着させながら迫ってきた。さらにこちらの股間を豪快に握ってくる。だが、前述の懸念に加え──朝までSEXしたら起きられるのか(挙式は11時から)、寝坊して間に合わなかったら最悪だ──などと迷っていると、「ノープロブレム」と言いながら、私をどこかへ連れていこうとする。彼女が手を引く先は街灯もなく真っ暗闇。もしもチンピラたちが待機していて、そのまま身ぐるみを剥がされてしまったらどうしよう……。

 正直なところ不安のほうが大きい。一方で、これからなにが起こるのかワクワクしている自分もいる。やはり潜入ライターの血を抑えることはできないのか。覚悟を決め、なすがまま着いていくことにした。

深夜の寺院でご開帳

 徒歩3分。人やバイクがギリギリ通れるぐらいの小さな路地裏。なんと、ここはヒンドゥー寺院の真横だ。大丈夫なのか。罰当たりにもほどがある(汗)。彼女はそんなことも気に留めず、寺院の壁を背に堂々と仁王立ち。そして力強く言う。

「見なさい、私のオ●ンコ!」

 彼女が自らスカートをまくしあげると、なんとノーパン。せっかくなので中をのぞきこむ(笑)。キレイに短く整えられたアンダーヘア……はさておき、異臭がすごい。なんかすごい。もしや性病なのではないか。しばらく観察していると彼女が自らご開帳。先ほどよりもさらに語気を強めてこう続ける。

「カモン、ハリーアップ(早く挿れて!)」

tachinbo
厳かな観音様を拝む私。とてもではないがニョイ棒は使えそうにない

 恐らく彼女はこうして道ばたでヤリまくっているのだろう。そのたびに洗っているわけがないので臭いうえにビョーキのリスクも高い。

「ノープロブレム!」

 彼女はそう繰り返すが、ゴムすら持っていないのだ。プロブレムだらけの状況では、さすがに私のニョイ棒(チンチン)も無反応。せっかく観音様まで拝ませてもらっておきながら、申し訳なく思った。そこで私は、手と手を合わせて「南無〜」と合掌した後、5万ルピア(約400円)のお賽銭(チップ)を渡してからその場を去ったのだった。

昼間のクタエリアもハプニング満載!

 ──数日後。無事に友人の結婚式を終えた私は、ジンバランに住む日本人Mさんと知り合い、彼の家に転がりこんでいた。Mさんは幼い頃から父親の仕事の都合で現地を行き来しており、インドネシア語がペラペラ。さらに中学2年生の頃から風俗に足を運んでいたという強者。そんな現地在住ならではの生きた情報を授かり、バリ島の風俗地帯サヌールの調査も果たした(結局いつも通りのアングラ旅行になっている)。この辺りの顛末はいずれ本にするか、ニホンジンドットコムで書こうと思っている。

 さておき、クタエリアでハプニングが巻き起こるのは夜の時間帯だけではない。最後にもうひとネタ記しておこう。

traditional-massage
クタエリアのトラディショナルなマッサージ屋。ムフフな行為はナシ

普通の土産物屋がマッサージ風俗に

 Mさんは昼間、仕事に出かけている。そのため、私は時間を持て余すようになっていた。バリ滞在期間も残り少なくなってきたところでお土産を買うため再びクタを訪れた。

 クタエリアには観光客向けの土産物屋がひしめきあう。金額交渉を楽しみながらブラブラ歩いていると、やたらとチンチン型のグッズが売られている。聞くと、現地では聖なる意味をもつモチーフなんだとか。

shop 
インドネシアではチンチンは神聖なもの。土産物屋では、栓抜きやオブジェなど様々なグッズとして売られている。店主のオッサン「オレのビッグマグナムはこんなもんじゃないぜ〜?」

 ともあれ、どうせ土産物を買うなら店員のお姉さんが可愛い店を選びたい(笑)。冷やかしも含め、一軒の土産物屋をのぞいていたときだった。

「買い物も疲れたでしょう。足裏マッサージしていかない?」

 土産物屋にも関わらず、マッサージとはどういうことなのか。店員の娘は10代後半と思われる少女。店内には施術用のベッドすらない。だが歩き疲れていたことは事実だ。金額を聞くと1時間で6万5,000ルピア(約500円)と激安。そこでお願いしてみることにした。

 彼女に連れられて店の奥に入ると、3畳ほどのスペースにベッドが置かれていた。灯りは裸電球ひとつしかなく、昼間だというのに薄暗い。さらにベッドは1度も洗っていないのではないかと疑ってしまうほどホコリっぽくナゾのシミだらけ──。

「パンツ1丁でうつ伏せになって待っててね」

 娘はそう言い残し、どこかへ消えていった。こんな場所に裸で寝転がっては、ダニや虫に刺されてしまうのではないか……。猛烈な不安に襲われる。とはいえ、彼女は素晴らしい指圧テクを持っているかもしれないのだ。ベッドが汚いぐらいで怖じ気づいてはならない。

4人の女性が両手両足をロック

 うつ伏せになりながら待つこと5分。いきなり両足を強く握られたので何事かと思いきや、そこにはドラム缶のような体型のオバちゃん2人組が!

 先ほどの若い娘はどこにいったのだろう。ワケもわからぬまま足裏マッサージがスタート。確かに気持ちいい。30分ほどすると次第にウトウトし始めた。
 ふと気付くと、両腕もロックされていた。今度は若い娘の2人組だ。いつのまにやらペディキュア(爪の手入れ)まで勝手に施されている。

「これ(爪のペディキュア)私がやったの。チップ忘れないでね」

 私は両手両足をマッサージされているため、まったく身動きがとれない。ベッドが小汚いことを抜きにすれば、プチ王様状態でもある。続けて、右手担当の娘がこう聞いてくる。

「マッサージの後はどうしたい?」

チンチンマンマンヤルヤルの大合唱

 どうしたいと問われても。当初の足裏マッサージとはあまりに異なる状況。一体どういった料金を請求されるのだろうか。恐る恐る聞いてみる。だが、右手担当の娘は返事をせずに、なにやら現地語で他3人と相談中。その後、誰が教えたのか日本語で大合唱が始まった。

「チンチン!」(右手の娘)
「マンマン!」(左手の娘)
「ヤルヤル!」(右足のオバちゃん)
「ヤルヤル!」(左足のオバちゃん)

 普通の土産物屋かと思いきや、なんとマッサージがあるうえに本番まで可能というのだ。これまでアジアの様々な国を歩いてきたが、こんな意味不明な体験は初めて。念のため本番価格を問う(笑)。

という結果。どうやら年齢が高くなるにつれて安くなるようだ。

果たして総額は……

 それはさておき、こんな店に長居していてはタケノコ剥ぎのようにお金をむしり取られてしまうだろう。私は「チンチンマンマンヤルヤル」の大合唱を制し、改めてマッサージ代のみを支払う旨を告げる。するとどうだろう。総額8,000円とのたまう。正直そこまでの大金は持ち合わせていない。

 洋服を着ながら交渉を続ける。当初の約束では500円だったはずだ。そもそもペディキュアや4人体制のマッサージは頼んでもいない。そこで500円×4人=2,000円チップとして500円を加え(合計2,500円)、有無を言わさず部屋を出た。特に追ってくることもなかったので彼女たちも妥協(?)したのだろう。 

観光地とはいえ注意が必要

 さて、今回はバリ島・クタの裏事情を記した。本記事だけ読むと危ないエリアと勘違いしてしまうかもしれないが、決してそんなことはない。他のアジア諸国を旅する場合と同様、深夜は出歩かない、あやしい人に声を掛けられても無視する、なるべく集団行動を心がけるなど、基本的な注意を払っていれば未然に防げることばかり

 そして、ほんの少しのトラブルはさておき、私自身それ以上に魅力あふれる国だと感じた。これまで海外を20ヶ国以上旅してきたなかで、実際インドネシアのバリ島が1番気に入った。現地人の性格、物価、食事、将来性。いつか小さな島でも買って、余生をのんびり過ごすのも悪くないなと思う。

 そんなワケでくれぐれも注意を忘れずにクタエリアをはじめ、皆様にもバリ島の旅行を楽しんでほしい。

(文・藤山六輝)
bali-holiday 
 

マカオの裏サウナで手に入れた人種別価格表〜海外で春を売る日本人女性、なぜそこに?

 ギャンブルの街として知られるマカオ。今では本場ラスベガス以上の興行収入を誇るカジノタウンとして注目を集めている。

 日本の芸能人やタレントがテレビなどでギャンブルのエピソードを語るときにたびたび登場するだけでなく、大王製紙の元会長・井川意高氏が総額106億8000万円もの借金を作ってまでのめり込んでいたという事件も記憶に新しいところだ。

 井川氏は毎週末マカオの有名カジノ「ウィン・マカオ」まで通い、会社のお金を借り入れてまでギャンブルを繰り返したという。次第にその額は膨れ上がり、取り返しのつかないところまでいき身を滅ぼしてしまった。井川氏は懲役4年の実刑判決まで受けている。 

 では、なぜそこまで人々がマカオのとりこになるのか。普段はギャンブルをまったくやらない私だが、実際に調査しにいってみた。そこで見たものとは、予想を遥かに上回る光景だったーー。

ヨーロッパ文化を残す中国の特別行政区

マカオは100年以上にわたるポルトガル統治の時代を経て、約15年前に中国へと返還されたばかりの特別行政区。中国や隣接した香港とは異なる、ヨーロッパ文化を色濃く反映したモダンな街並が広がっている。

 普段は小汚い貧乏パッカーとして海外を旅している私だが、今回ばかりは小綺麗な洋服を用意している。なぜなら、カジノにはドレスコード(服装の規定)が設けられている場合もあるからだ。せっかくマカオへ取材に来たのである。門前払いをくらっては元も子もない。

Casino
マカオのド真ん中にそびえたつグランド・リスボアホテルのカジノ。

高級ホテルとカジノが乱立する街

 香港からフェリーに乗ってマカオに訪れた私。ほかの乗客はいかにも金持ちそうな中国人や欧米人ばかりだ。なんとなく場違いな感じがしなくもなかったが、気を取り直してバスに乗り込む。

 窓から景色を眺めると、ヨーロッパ風の建物に交じって、いたるところにギラギラとしたカジノとド派手な高級ホテルが乱立していることに気付いた。どこかミスマッチで滑稽に思えなくもないが、それもマカオの個性なのだろう。

Local casino
街中にはゲーセン感覚で入れる地元民御用達のカジノも少なくない。

ギャンブルに命運を委ねる

 財布の中身はたったの3000香港ドル(約4万円)。それで十分な調査をしようなど皮算用にもほどがある。物価が高いと言われるマカオでは、生活費を考えるとまったく余裕などない。
 それでも根拠のない自信があった。普段はギャンブルなどやらないが、これまでに勝負事では何度かビギナーズラックを経験している。

 もともとデタラメに賽を投げ続けてきた人生、旅の命運をギャンブルに委ねてみるのもまた一興ではないか。私はゲストハウスで身支度を整えた後、高級ホテル内に併設されているカジノに向かったのだった。

サイコロで大勝ち

 目の前のディーラーが肩を落としながら交代させられた。結果はエニートリプル。ゾロ目だ。初めての挑戦で、しかも1回ポッキリにも関わらず、手元には30万円以上を超えるチップが配られていた。

 私が挑戦したのは大小(タイスウ)と呼ばれるサイコロのゲーム。いわゆる丁半博打の一種だ。ディーラーが3つのサイコロを振り、その合計数を当てるというもの。合計数が10以下を「小」、11以上ならば「大」。掛け金の倍率は2倍。

Sic bo
ゾロ目が出る瞬間を言い当てることが出来れば掛け金は25倍に!

 ただし、ゾロ目「エニートリプル」が出た場合はディーラーの総取りとなる。もしもゾロ目「エニートリプル」を当てることが出来れば、倍率はいっきに25倍まで膨れ上がる。しかし、ゾロ目が出ることなどめったにないと思われる。私が当てることが出来たのはラッキーとしか言いようがない。世の中にはギャンブルの攻略本なども出版されているが、その理論が常に当てはまるとは限らない。そうでなければ誰もが大金持ちになってしまう。

 それでも私がやったことと言えば、1時間以上も勝負を眺め続け、ディーラー(カジノ側)が総取りしたいタイミングを裏読みしたことだ。要するに、「大」と「小」の両方に莫大な掛け金がバラけたときだった。その一瞬ですべてが決まった。

放心状態でサウナに辿り着く

 ギャンブルの勝者が向かう場所と言えば……それはサウナだ。ちなみに、サウナと言っても日本のように汗を流すだけではない。マカオでは売春が合法なのだ。カジノと同様に高級ホテルのなかに併設されている場合が多く、たとえ客が大金を手にしてもすぐに胴元の手元へ戻ってくるようなうまい仕組みが出来ていると思う。

 とはいえ、先ほどの興奮を抑えることが出来ず、とりあえず外に出て気持ちを落ち着かせようと思った。たった1度のギャンブルで私の月収以上のお金が手に入ってしまったことが信じられない。放心状態のまま1時間以上ひたすら歩き続けると、目の前にはサウナをウリにした高級ホテルが佇んでいた。いかにもムフフな雰囲気が漂っている。ただし、とんでもなく高そうではある。

 お金はある。ここまで来たら、とにかく内部がどうなっているのか入ってみるしかない。

Hotel
夜がふけた頃、きらびやかなネオンが灯された高級ホテル。

セレブ気分を味わう

 エレベーターの扉が開くと、ラグジュアリーなソファとシャンデリアが目に飛び込んできた。まるでセレブのライフスタイルを彷彿させる。スーツを着た男性スタッフに促されてソファに腰掛けると、おしぼりと一緒にウェルカムドリンクとしてコーラが差し出された。

 男性スタッフが料金やシステムをていねいに説明する。しかも日本語だ。次に奥の更衣室へと案内されると、洋服を脱ぐこともすべてスタッフが手伝ってくれる。日本の高級風俗店でもここまでのホスピタリティはなかなかない。正直、悪い気分はまったくしなかった。

この世の天国なのか?

 タオル1枚になり大浴場に入ると、この世の天国なのではないかと目を疑った。浴槽が鮮やかなイルミネーションでライトアップされ、アカスリ場やサウナにはビキニ姿の女性が大勢待機している。私がまずはシャワーを浴びようとすると、すぐにちょっかいを出してきた。

 顔立ちから察するに、フィリピンやベトナムなどの東南アジア系だと思われる。彼女たちはカラダを洗うお手伝いや冷たいおしぼりなどを運んでくれるのだが、どうやらそれだけではないようだ。なかには手をつないで奥の部屋へと消えていく男性までいる。

 私は湯船に浸かりながらそんな光景を眺めていた。

Sauna
サウナの内部。ビキニ姿の女性があくせくと動き回っている

人間オークションさながらのショータイム

 突然、場内にディスコ調の音楽が鳴り響くと、照明もド派手に切り替わった。どうしたのかと思うと、なんと世界各国の美女がビキニ姿で登場。アジア系のみならず、ヨーロッパからアフリカまですべての人種を網羅している。その数はザッと100人は超えているであろう。

 彼女たちのレベルはアカスリ場にいた女性たちとは比べものにならないぐらい総じて高く、テレビや雑誌で見るタレントやモデルと同等かそれ以上だった。2階に設置されたショーケースを見上げると、素っ裸の女性がポールダンスを披露していた。

 そして、浴場の中心にかたまって眺めていた男性客の周囲をグルグルと歩き回り、目配せをはじめる。彼女たちの胸元にはナンバープレートが付けられており、男性客が我先にと手を挙げてセリのように指名していく。

 その光景は、どこか人間オークションのように思えた。

人種別の価格表

 男性スタッフがメニュー表を手渡してきた。そこに目をやると、なんと人種別に金額が記載されていた。下記は2016年5月現在のレートで換算したもの。

 韓国人と台湾人は、キャバ嬢みたいに派手なメイクであか抜けた印象。対してベトナムやモンゴル人は地味な雰囲気だ。中国人はとにかくスタイルの良さが際立っていた。ヨーロッパ系は、アジア人男性の好みを意識しているのか小柄でスレンダーな女性が揃えられている。

Menu
人種別の価格表。施術内容は自由恋愛アリのマッサージ

海外で春を売る日本人女性

「彼女たちは特別メニューになります。金額は5万2636円です」

 そのなかには、なんと日本人と思われる女性が多数含まれていた。まさか海外のこんな場所で同胞と出会うとは思ってもみなかったので衝撃としか言いようがない。目が合うと、にっこりとほほえみ返してくる。

 日本人女性の金額は、ほかの人種に比べて約2倍近くの設定となっていた。

根強く残る半日感情の裏返し?

 そうこうしていると、初老の中国人男性が日本人女性を指名。実際マカオを訪れるのは中国人の富裕層が多い。中国では周知の通り反日感情が今でも根強く残っていると聞く。もしや戦争の恨みをこの場で晴らしているのだろうか。

 本当のところはわからないが、ともあれ日本人女性の値段が高いということは希少価値と需要があるということだ。経済の仕組みからそれだけは事実なのだと感じた。

Macao
休憩室のソファーにて。男性のタオルの下では怪しく手がうごめいている

日本人女性を指名

 私は1時間に1回程度のショータイムを休憩室で何度かやり過ごした後、迷った挙げ句に日本人女性を指名した。彼女のほうも驚いた様子だった。当初はマカオに来て高額な料金を支払ってまで日本人女性と2人きりになることには興味がもてなかったが、どういった経緯で働いているのか気になったからだ。

 こういった場で理由を聞いたところで真実を語ってくれるとも思わなかったが、少しでも会話をしてみたいと考えたからだ。

「同じ日本人から指名されたのは初めてかもしれない」

 個室で2人きりになると、彼女はうれしそうにつぶやいた。普段はやはり中国人の男性ばかり相手にしているらしい。ベッドに寝転んで頃合いを見計らいながら少しづつ聞いてみる。

「ところでどうしてここに?」
「え、お兄さんのほうはよく遊びにくるの?」

 やはり自分のことは喋りたくないのか、逆に質問で返してくる。それでも諦めずに、一言ずつでも言葉を拾いたい。

「日本の店では働いていたの?」
「本番アリの店とか企画モノのアダルトビデオに少し出てたかな」
「マカオに来たのはなんで?」
「よくわからない。気付いたらここにいた感じ。あはは」

 彼女は声を挙げて笑った。そしてひと呼吸おいてから、さびしそうにうつむいたのだった。そこからはもう野暮な質問をすることは憚られた……。

賽のように流れゆく生き方

 賽は投げられた。人生とは、サイコロの目のようなものだ。まさに運任せ。どのように転がるのかわからない。事ここに至ったうえは、結果がどうなろうとも断行するしかない。

 彼女は、デタラメに投げられた賽のように転がり続けている最中なのだろう。いつかゾロ目を揃え、アガリが出る日を夢見て。
Dice

バングラデシュに実在する闇のスラム〜タンガイルの売春地帯に生まれた女たちは運命を変えられるのか

 入り口の側にはライフルを抱えた2人の警官が立っていた。どうやら見回りで足を運んだだけのようだ。それでもあまりの恐怖に足がすくむ。このまま歩を進めて良いのだろうか。いや、わざわざ日本から来ておきながら引き返しては元も子もない。どうしても自分の目にその光景を焼き付けておきたかった。

Slum
この通りを進むと左側に噂の場所が見えてくる

ダッカから数時間。マリファナ漂う、絵に描いたようなスラム

 今にも崩れ落ちそうなバラックが立ち並ぶスラム街。まるで何世紀も時代から取り残されてしまったように荒れ果てている。ガラの悪い連中がチラチラとこちらの様子をうかがっており、時折ワケのわからない言葉を投げかけてくる。いまにも殴りかかってくるのではないか。私はビクビクしていた。彼らから微かにマリファナのような匂いも漂ってくる。

 好奇心ゆえにここまで来たわけだが、思った以上にヤバいところまで足を踏み込んでしまったのかもしれない……。

slum02.png
スラムの横で声をかけてきた上半身裸のオッサン

タンガイルまで足を運んだ理由

 私は首都・ダッカから北上すること約70キロ。タンガイルという村に来ていた。あたりには田んぼや畑しかない。こんな辺鄙なところに一体なにがあるというのか。ガイドブックにも載っておらず、観光で来る外国人などほとんどいるはずがない。そもそも、ほとんどの人がバングラデシュと聞いても、どんな国なのかサッパリわからないと思う。

『バングラデシュに行こう。観光客が来る前に』

 これは冗談ではなく、政府観光局が打ち出したキャッチコピー。観光客が少ないことを逆手にとった自虐ネタだが、かなり的を得ている。実際に自分以外の外国人旅行者には誰1人として会わなかった。そんな国を訪れて私が見たかったものとはーー。

公娼制度でひらかれた政府公認の色街「フォスパダ」

 バングラデシュはイスラム教国家。性に対してはタブーが多いことで知られている。にも関わらず、公娼制度がある珍しい国だ。ネットの掲示板では古くよりタンガイルに売春地帯があると囁かれていたが、真偽のほどは定かではなかった。イスラム教国の売春街とは、一体どんな場所なのか。かねてより興味を持たされていたのだ。詳しい情報はなく、行ってみるほか確かめるすべはなかったーー。

slumwoman.png
狭い通路に売春女性が並ぶ。ここに飛び込むには勇気が必要だ

数百人の売春婦が「プキプキ」(ジキジキ, SEXしないか)と声をかけてくる

ーー地元では「フォスパダ」と呼ばれている当の売春スラム。まだ年端もいかない少女からとっくに閉経は過ぎているであろう熟女。狭い路地の両側に彼女たちは無表情で待ち構えている。なかには明らかに障害を抱えていたり、重大な病気を患っていそうな女性まで見受けられた。狭いエリアながら、そこには数百人の売春婦がひしめきあっていた。誰もが厚化粧で着飾り、淫猥な雌の香りを漂わせている。

「ヘーイ、プキプキ!」
 
 彼女たちは私の存在に気付くと、誰もがそう叫びながら強引に腕を掴んでくる。プキプキとは、現地でSEXを指す隠語だ。アジアでは「ジキジキ」(女性器を意味する)という言葉がSEXの隠語として広く浸透しているが、ここ、バングラデシュでは「プキプキ」と言う。10人を超える女性から同時に迫られると、うれしいどころか人間は恐怖を感じるものだ。その勢いはTシャツが引きちぎられてしまうほどだった。このままでは奈落の底まで引きずり込まれてしまいそうだ。私はなんとか無数の手を振りほどきつつ、スラムの奥へと進んでいったのだった。

わずか500円で春を売る女性たち

 彼女たちが提示してくる金額は500タカ。日本円でもわずか500円弱だ。私たちが普段ランチにつかっているワンコインで春を売っているというのか。現地の小さな食堂でカレーを食べると100タカ程度。そう考えても5食分程度の金額でしかない。 

時代を超えて脈々と受け継がれる稼業

 私は、すぐにフォスパダが単なる色街ではないことに気付いた。ここには彼女たちの生活そのものがあったのだ。中には小さな商店やチャイ(紅茶)屋まで営まれている。乳飲み子を抱えた母親と店番をする父親。チャイ屋で休憩しながら主人と話していると、ひっきりなしに女性が遊びにきた。ある女が来ると突然、主人がこう言った。

「ヘイ、ジャパニーズ。彼女はオレの妻なんだ。プキプキするか?」

 彼女もまた、見るからに売春婦だった。一度落ち着いてから探索しようと、フォスパダの外に出る。横に流れるドブ川沿いを歩いていると、ひっきりなしに現地の男性が集まってきて声をかけられる。

「プキプキするか?」
「疲れているから遠慮するよ」
「そうか。ならいい。俺たちはみんなファミリーだ。こいつが弟、そっちにいるのが親戚。なあ、お前はカメラをもっているだろう。ファミリーの写真を撮ってくれないか?」

Chai
スラム横のチャイ屋にて主人と妻が写真を撮らせてくれた

永遠に終わらない連鎖

 そのとき、私は確信した。もちろん、様々な事情で新しく連れてこられる女性も多くいるだろう。だが、ここに住んでいる人たちにとって、売春とは脈々と受け継がれる家業のひとつなのだ。幼き頃からこうした環境で育てば、それ以外の生きかたなど検討もつかないはず。その連鎖は親から子、孫の代へと永遠に続いていく

 売春や付随する斡旋業から足を洗うということは、家族との絶縁に等しい。誰もが家族や友人と離ればなれにはなりたくない。それならば一生をここで終えるのも悪くない、そう考えてもおかしくないだろうと推測した。

貧しくても家族と友人のほうが大事

 数日間フォスパダの近くで過ごし、顔なじみになった男性がいる。スラムの住人ではなく、英語が話せる学校教師だ。ある日、彼からこんな話を聞いた。

「詳しくは知らないが、NGOの職員から聞いた話。かつて客に身受けされて出ていった女も少なからずいるらしい。でもほとんどがしばらくするとみずからフォスパダに戻ってくるそうだ。なぜなら外の世界、一般社会に馴染めないから。ここで生きていれば、貧しくても家族や友人がいる。そのほうが幸せなのだろう」

Familie
家族や友人と過ごす日々。それこそが一番大事なのではないか

人間は生まれながらにして平等ではない

 私たち日本人は、だれでも1度や2度ぐらいは海外旅行をすることができる。世界の広さを知ることができる。職業を選択することもできる。生き方を大きく変えることも不可能ではない。一方で、バングラデシュの売春スラムで生を受けた場合、背負った宿命から決して逃れることはできない。
 
 そう考えると、人は生まれながらにして平等であるとは言えないだろう。

 いや、そもそも幸せの価値基準を私たちは間違えているのではないか。消費社会のなかで、自殺や過労死するほど働き続け、お金を稼いでいる人のほうが偉いとされる今の日本の風潮にはやや違和感をおぼえる。

 輪廻天生。車輪がぐるぐると回転し続けるように人が何度も生死を繰り返すこと。バングラデシュの売春スラムに生まれた人たちは、果たして来世でも同じ人生を望むのだろうか。

Real happy
※取材は2013年当時の状況を記したもの。2014年に閉鎖されたとのニュースも流れたが、すでに元通りになっているという噂もある。真偽のほどは定かではない。

年収1,000万円、経営者から転落し風俗に。42歳バツイチ女性のプライドが邪魔をする貧困 〜彼女を救ったのはオ●クラだった

アベノミクスや1億総活躍社会もなんのその。世間では未曾有の不景気が叫ばれて久しいところだが、非正規雇用、未婚やバツイチなど、特に女性の貧困が大きな社会問題として取り沙汰されている。私の身の回りでも同様の現実に直面している例は枚挙にいとまがない。昨年の夏頃、知人の女性から久しぶりに連絡を受けた。折り入って相談があるという。

「こんにちは、お久しぶり。急に呼び出してごめんなさい」

数年ぶりの再会、変わり果てた姿……

 彼女とは仕事関係の飲み会で知り合って以来、約数年ぶりの再会だった。都内の喫茶店に現れたその姿を見て、思わず目を疑ってしまった。色褪せたパーカーをだらしなく羽織り、白髪まじりのぼさぼさヘアにノーメイクのスッピン、体型は崩れて私よりひと回りもふた回りも大きく太って見えた。かつてはキャリアウーマンとして活躍し、ルイ・ヴィトンやシャネルのカバンなど、ブランドモノを多く身につけていたはずなので、あまりの変貌ぶりに驚いたからだ。その表情は完全に疲れきっていた。

nayami

死ぬほど働いても食えないライター生活

 現在は、フリーランスのライターとして細々と活動している洋子さん(42歳、仮名)。主にWEB媒体の広告記事を1本500~1000円の単価で書いているそうだ。毎日死ぬほどの原稿量をこなしても月収はわずか10万円にも満たない。5万円の家賃はおろか、国民健康保険や年金も払えず、ついには財産を差し押さえられてしまったのだとか。

 しかしながら、私の知る彼女は貧困とは無縁の「会社経営者」だ。いったい彼女の身になにが起こったのかーー。

会社経営で年収1000万、すべてが順風満帆に思えた

ーー洋子さんは有名化粧品会社の美容部員を経て、女性ファッション雑誌の編集プロダクションに勤務。矢継ぎ早に軽快なトークを繰り出すイケイケ女史で、持ち前の愛嬌や営業力をいかして30歳のときに独立。雑誌や広告記事の制作を中心に、モデルなどの斡旋も行うメディア関係のプロダクションを立ち上げた。

1年で社員7名を抱えるまで成長

「もともと私は気が強いほう。自分よりあきらかに能力が劣る人に仕事で指示を出されたりするのがいやだった。上司の要領の悪さにイライラしちゃって。それなら自分で会社を作ってやりたいようにやるのが一番かなって」

 約10年前、メディアと言えば紙媒体が全盛の時代。仕事には困らなかったという。会社はすぐ軌道にのり、設立から1年程度で社員とアルバイトを含めて7名のスタッフを抱えるようになった。年収は今までの2倍以上、1000万円の大台を超えていた。

一般企業の男性と結婚

 私生活も順調だった。32歳のときにパーティで知り合った一般企業の会社員と結婚。無口でおとなしい男性だったが、真逆の性格をした彼女にはちょうどよかった。彼の年収は350万程度。決して満足な収入ではないが、そのぶん自分が稼げばいいだけの話。そう割り切れるほど彼女の仕事は順調だったのだ。

Happy-wedding

旦那と離婚、出版不況の果てに廃業

 すべてが順風満帆に思えた頃。結婚をしてから約2年の月日が過ぎていた。

「仕事を頑張りすぎ土日もほとんど休みがなく、プライベートの時間がなかった。子どもを作ってる余裕なんてあるわけがない。でも、旦那はそれが不満だったみたい。急に離婚届を突きつけられて。こっちとしては旦那のために働いているつもりだったけど、結局、理解してもらえなかったんだと思う。あっさり離婚しちゃった。その頃かな、会社まで傾きはじめたのは。悪いことって続くのよね」

大きな広告プロジェクトが破綻

 数ヶ月の間、社員の総力をあげて取り組んでいた広告のプロジェクトが吹っ飛んでしまったのだ。作っていた制作物が世の中に出ないとなれば、報酬は支払われない。洋子さんは経営者として、あらゆる手を使って発注元に食い下がったが、少しばかりの金額を補填してもらえただけで、大部分はどうにもならなかったのだという。小さなプロダクションにとっては、たとえ100万円程度の未払いが発生しただけでも収支の面で大きな痛手となる。

会社が倒産、ストレスで激太り

 さらに、ここ数年の出版不況が追い打ちをかけ、ギャランティの大幅な引き下げを皮切りに、手がけていた雑誌のほとんどが潰れてしまう。会社は自転車操業の末、社員への給料はおろか、外注スタッフへの支払いまで滞ってしまった。洋子さんはポケットマネーから切り崩してなんとか回している状態だったが、次第にストレスで精神を病んでしまう。暴飲暴食の結果、体重は20キロも増加。もう限界がきていた。彼女は40歳にして貯金がゼロになり、会社をたたむことを決めた

風俗で働くことを決意

「今日相談したかったのは、あんまり人に言えない仕事のこと。いったん会社で社長までやると、いまさら人に頭を下げたり普通のOLには戻れる気がしないの。かといって、安い単価でWEBの記事をライターとして書いてるだけじゃ生活は苦しいままだし、どうしたらいいのかなって」

 彼女は、ここしばらくの間はキャバ嬢もやってみたそうだ。だが、若い女のコと一緒に並べられたり深夜働くのは年齢的にもキツかったのだという。

「それで……もう風俗しかないなと。でも風俗の業態とかよくわからないし、性病のリスクもコワいから安全なジャンルとかオススメを教えてほしいの」

 私は、これまでに様々な風俗店を取材してきたが、どのジャンルであろうと働く女性側は非常に大変なことを知っている。それでもいいのか何度も彼女に問いかけたが、このままでは生活がもたず背に腹は代えられないという。そこで、基本的には性病のリスクが少ない(と思われる)オ●クラを紹介することにした。

オナ●ラとは

オ●ニークラブの略。「股間をシコシコする行為を女性に手伝ってもらいたい」という殿方のニーズに応えたライト風俗と呼ばれるジャンルの一種。ソフトサービスをウリに3000~5000円程度の低価格から楽しめるので、近年のお財布事情に厳しいサラリーマンから人気を集めている。また、そこで働く女性としても「脱がない」「触られない」「舐めない」の3ナイで、身体的負担も少なく働きやすいと評判

オ●クラの面接で早くも挫折

 洋子さんとはその後も頻繁に連絡を取り合った。求人情報を見てこの店は大丈夫そうなのか、など。そして、ついに彼女はインターネットで稼げそうな店を発見し、応募にいたる。『副業感覚でOK! 週3で月収30万円以上の仲間がたくさんいます』というキャッチコピーに釣られたようだ。

Kabukicho

「場所は都内某所にある雑居ビルで、面接を担当するスーツ姿の男性は、自分よりもはるかに若い20代前半。面接官のノリは軽く親しみやすい雰囲気。今まではあまり人に言えなかった自分の置かれている身の上話やキャバ嬢をしていた最近の愚痴で盛り上がりました。そうした簡単な雑談の後、アンケートの記入を求められたのですが、自分でオプションのプレイ範囲を決めるそうです。基本プレイは男性の股間を手でしごいてあげるだけ。そのぶん、オプションにはいろんな種類がありました」

 など多数の項目がアンケートに書いてある。とはいえ、男性側から触られたり自分が裸になることはできそうにない。どこにチェックを付けるのか迷っていると、面接官の表情は先ほどとは一変して厳しい口調でこう言った。

「ぶっちゃけ容姿は厳しいですし、アラフォーという年齢もネックです。オプションをどれだけ付けられるかが、あなたがどれだけ稼げるかのカギになると思いますよ!」

 しぶしぶと項目の最後、ゴム手袋にチェックを入れてみたところ、その理由を尋ねられたので「衛生面で良さそうだから」と彼女は答えた。すると、さらに面接官の男性はまくしたてる。

「これだからキャバ嬢あがりの女はダメなんだよ。オ●クラは単なる遊びじゃない。会社で社長やってたのかもしれないけど、相手のことを全然考えてないじゃん。衛生面うんぬんって完全に自分目線だし。あくまでお客さんが楽しんでくれるかどうかが大事。世の中にはゴム手袋の感触が好きっていう男性もいるんだよ!」

 洋子さんは、ぐうの音も出なかった。40歳を過ぎて、まさか20代前半の若造に世の中まで語られて説教されるとは思ってもみなかったのだ。

「正直オプションがゴム手袋だけだとほとんどお客さんも付けられないけど、どうします?」

 彼女は意気消沈しながらも、とにかく働かないことにはお金が稼げない。あまり気は進まなかったが、とりあえず項目のすべてにチェックを付けた。こうして無事に面接が通り、次の日に昼番として10~17時まで体験入店してみることにした。

1日でもらえた金額はわずか4000円

「翌日の朝、事務所で具体的な仕事の流れを確認した後、すぐに店舗に移動して四畳半ほどの小さな個室に押し込まれました。ベッドの横が鏡ばりになっていて、なんだか安くて小汚いラブホみたいな。仕事用のネグリジェに着替えて、お客さんが来るのをベッドのうえでじっと待っていましたが、平日の微妙な時期だったこともあるのか、いっこうに内線の電話で呼ばれる気配もありませんでした」

 なにも起こらず、もうすぐ昼番の終了時間である17時を迎えてしまう。まったくお金が稼げずに残念に思う反面、安堵感も入り交じった複雑な気持ちだったという。そのとき、突然プルルルルと内線が鳴り響き慌てて受話器をとった。

「お客さん1名入ります。オプションはゴム手袋で20分。それが終わったら今日は上がって大丈夫だよ」

初めての客と対面

 これから風俗嬢としてはじめてのお客さんと対面する。入り口の前に立ち、いつでもお客さんを迎えられる準備をした。深呼吸をしてから気分を整える。すると、ゆっくりと扉が開いた。

よくわからないブランドのTシャツを着たメガネの男性が入ってきた。

「多分、20代の後半ぐらいかな。声も小さくてぼそぼそと喋るから聞き取れない。こっちもなにを話したらいいのかわからなくて、気まずい感じでした」

 しばらくすると、向こうは慣れているのか自分でパンツを脱ぎ、丸出しの状態でベッドに寝転んだ。

「アレのサイズはあまり大きくなかったけど、なんか勝手に勃ってましたね。ゴム手袋をして、しばらくの間は無心でしごき続けました。最後の10分ぐらいになってからローションを使ったらすぐに逝っちゃってました。少し時間が余ったんですけど、特に話すこともなく、なんかむなしかった。自分、ここでなにやってるんだろうって。結局、お金もあんまり稼げなくてすぐに辞めちゃった」
 
 その日もらえた金額はわずか4000円だったという。お客さんが1人だけだったにしても、9時間拘束されていることを考えると割には合わない。コンビニでバイトをしたほうがよっぽど稼げるだろう。

デブ専向けのパーツモデルに

 もっと手っ取り早くオ●クラなどで大きなお金を得るためにはオプションを豊富にするか、あるいはヘルスやソープなどの本格的な店で働くか。しかしながら、洋子さんは元来プライドが高く、男に媚びることは苦手なタイプ。ここ以上のサービスはできないだろう。どうしたらいいのか名案が出せないまま、数ヵ月が過ぎていた。そんなある日、しばらくぶりに洋子さんから着信があった。

「どうも、元気にしてますか。実は悩んだけど、実家に戻りました。でも、年金暮らしで収入のない両親に甘えているのも申し訳なくて。今も厳しい生活が続いているけど、WEB記事のライターをやりながらパーツモデルをしてなんとか頑張ってます。1回の撮影で3万円近く稼げるんです」

Parts model

 電話で話しつつ、彼女に教えてもらったURLを閲覧すると、良く言えば巨乳やぽっちゃり、悪く言えばデブ専門。胸の谷間や脚、ランジェリー姿などが掲載されているニッチな層に向けた写真素材のサイトだった。正直、それを見ながら「セクシーですね」と答えるのが精一杯である。

出口の見えない厳しい現実

 さておき、身近な女性でさえ、こういったギリギリな生活に追い込まれているということは、日本中で多くの人が同様の状況にあるはずだと実感した。彼女の場合は帰れる実家があった。しかしそうもいかない人も多いだろう。もはや誰もが無関係とは言いきれない。私自身もライターという不安定な仕事をしており、将来について一抹の不安がよぎった。

最後に、彼女に対して野暮だとは思いながらも今後について聞いてみた。

「もう自分で会社を経営するのはコリゴリだけど、また結婚はしたいと思っている。たまに婚活パーティに参加して、お金持ちの男性を探すのが今の唯一の楽しみかな。それじゃまたね」

 洋子さんがため息まじりにそうつぶやくと、電話は静かに切れた。
 
happy

写真提供: TOKYO FORMHiroaki Maeda

0